『バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海』
ジャンル:本格派ファンタジックRPG(君とはじめて出会うRPG)
プラットホーム:GC/ディスク2枚組
メモリーカード使用ブロック数:8~
開発:モノリスソフト&トライクレッシェンド
発売:ナムコ(現バンダイナムコホールディングス) 販売:任天堂
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はじめに
突然ですが、スクロールミカという音楽が大好きです。
その曲との出会いは「太鼓の達人ぽ~たぶる」、このソフト欲しさにPSPを購入した私は初回起動時、「うおおお夏祭りだもじぴったんだブルーハーツだ北斗の拳だナムコメドレーだリッジレーサーだ」と胸躍らせながら貪るように遊んでいたことを覚えております。
そんな最中、どうもファミコン風なサウンドが聞こえてきました。
なんだろうこの曲はと、せっかくだから選んでみました。思えばこの時もう既に運命は決まっていたのかもしれません。
その、…綺麗にハマりました。感動にうちふるえました。
ファミコンライクな電子音ライブラリを用いてシンセギターベースドラムなどを再現してあるのですが、すごくメロディアスで思わず口ずさんでしまう旋律。
ファミコン音源ではあっても確認できる限りで6和音か7和音ほど用いられており、それプラスボーカルとドラムが曲を構成しておりますので厚味が凄いのです。
歌詞は、80年代ファミコンで連打しまくってたころの子供の心情をシンプルに語っておりこれまたステキ。
ただ一つ言えることは、この曲はなにをどうがんばってもファミコンでは鳴らせないと言うことです。
概要
さて、では本日の本題たるバテンカイトスのお話をしましょう。
開発はゼノサーガでおなじみモノリスソフト、販売はナムコ(現バンダイナムコ)でお届けする、オーソドックス極まるRPGです。
バトルが特徴的で、カードゲームのような雰囲気になっております(あ、やっぱしオーソドックスじゃないや)。
プレイヤーは、いわゆるRPGの装備のかわりに、手持ちのカード(マグナスといいます)を使ってデッキをくみます。
戦闘シーンでは、自ターンになったら、手持ちのカード(デッキ)の中からランダムにマグナスが配られ、適宜適切なものを使っていくことになります(攻撃なら剣やナックルのマグナスを、回復ならバナナのマグナスを使うといった感じです。)。
少し聞くとややこしそうですが、例えば剣でも防御できたり、防具以外のアイテム(青いバナナ)などでも攻撃できるので、最初は恐れず遊びつつ徐々に慣れて行ける余裕が十分にありますので実際の所とても親切です。
特別な事はこのくらいで、あとは全く不通のRPGですから敷居は決して高くなく、安心して入ってきてください。
特徴
このゲーム、ジャンルの所に「君とはじめて出会うRPG」などとどこぞのテイルズのようなことが書いてありますが、その理由ははっきりしております。即ち、「プレイヤー=主人公ではない」ということを表したキャッチなのです。
プレイヤーは、主人公に憑依している精霊としてこの物語へ関わっていきます。
イベントシーンでは主人公たちがこちらを向いて、プレイヤーに問いかけてきたり意見を尋ねたりします。
その受け答えにより信頼が増したり戦闘が有利になったりします。
それこそ、しっかりとプレイヤーがキャストの一人として「役を演じられる」作品ですから、久しぶりの{ロールプレイング}ゲームということになるのかもしれません。
プレイヤーが精霊であることを生かした演出や物語展開も多く入っております。物語そのものもそうですし、音声を暈かしたように収録しているのもデータ圧縮での容量節約&臨場感アップの演出としても機能し、結果イベントはフルボイスとなりました。その意味からも更におすすめです。
この「君とはじめて出会う」というキャッチは、つまり「俺(プレイヤー)と出会う」というもの、ある種本物のロールプレイが味わえるのが本作の特徴なのです。
演出
さて、本作には所謂ムービーシーンが一切ございません(オープニング除く)。
イベントシーンも含め終始俯瞰視点、カメラが少々動いたりズームをしてエフェクトを際だたせるくらいなものです。
あとは、画面演出とキャラの動き、声優さんたちの演義(イベントシーンはフルボイス)ですべて成り立っております。
さし当たり、リアル調でアニメムービーを省いたテイルズシリーズのイベントシーンといった風情でしょうか。
特に各種イベントの特徴として、
・拝啓が恐ろしいほどに描き込まれており、光の表現と重ねてちょっととんでもないほどに美麗
・キャラのモーションがとても作り込んであり、イベントシーンではそれをたっぷり堪能できるが、それら全てがとても自然に挿入されているので妙な違和感が全くない。
・BGMがフルオーケストラの生演奏ストリーミング再生にて、曲自体もとても素敵。
・難易度が中の上といった具合で、がんばれば十分になんとかなる手応え。つまり、とても良いバランス。
・マグナスコンプリート、コンボ研究、星座マグナスの収集など、やりこみだすと底が見えないほどに深い。
つまり、これらの特徴から本作はスーパーファミコンの頃のRPGを作る製法を用いつつ、現在の開発環境とハードの限界を使ってそれを実現したソフトだということです。
おわりに
SFCのころは生演奏フルボイスは不可能、ただそれを目指していたであろう作品はいくつもあります(ワンダープロジェクトJ、魔法陣グルグル、ライブアライブ、スターオーシャン、テイルズオブファンタジア)。だからこそ現在の技術でそれを実現した。更にはロード時間はゲームキューブですからSFCのカセットよろしく皆無ときております。
このバテンカイトスは、少しレトロな雰囲気を現在の最先端技術で味わえる、あの頃遊びたくても遊べなかった世界が具現化されたソフトの1つなのです。
最初に記したスクロールミカにも本作バテンカイトスと同じにおいを感じまして、話の枕にもってまいりました。
ファミコンは標準では4音のみ同時に鳴らせ、当時はコナミを中心にそれ以上の音を鳴らすためにカセットにチップを仕込むということがございました。
ですが現在では機械の進歩により、ファミコン音源をふんだんに用いて音楽を作り、もちろんボーカルも入れることができる・・・。でも、けっしてハイクオリティの生音に近いリアルな電子音にしたわけではない。
そして、曲そのものの完成度はかなり高く、ファンも多い。
このスクロールミカと言わずバテンと言わず、もうとっくにつかい尽くされたと思われていた技術を今一度最新鋭の環境に用いて作品として完成させるという動き、ものすごく素敵です。
新しいものが悪いわけでもなく、さりとて昔のものが劣っているわけではない。温故知新の魂をこれらの作品は語っているように思われるのです。
本作は作り込み用の凄さだけを取り出しても体験して思い出になる作品です。なのでぜひGCあるいはWiiをお持ちなら、むしろ少しでも興味を持っていただけたならぜひ一度触れてみていただいて、RPGというジャンルの極まった形の一つに触れてみてください。