アカイイト

ジャンル和風伝奇アドベンチャー
メーカーサクセス
ダウンロード配信SENオンラインストアからアーカイブス版を入手
公式サイト

はじめに

スクリーンリーダーとは主に視覚障害者を対象として、パソコンに表示される画面内文字情報を音声で読むためのソフトの総称であります。
しかしながら、実際としてその挙動を想像することはなかなか難しいところです。

基本は方向キーなどでメニュー移動を試行すると異動先の項目を読む仕組みなのですが、その動きをより直感的説明として「あぁ、アカイイトかアオイシロのシステムボイスみたいなものですよ」とお話すれば通じる場合がありそう…、今日はそんなお話です。

概要

アカイイトは、PS2で発売されたサクセス販売の和風ADVです。
表示される文章を読み、中途現れる選択肢を選ぶことで物語が分岐していきます。それを制御しグッドエンドへ至る、或いは全エンディングをコンプリすることが目的です。
主人公込みでフルボイス、更にはタイトル画面で放置すると現れるOPデモがプロローグ&キャラ紹介になっているので細かく親切な構造になっています。
物語は現代日本を舞台とし、鬼や妖怪等和的ファンタジーを設定に組み込みながら、主人公の文字通りの「血」に由来する事件に巻き込まれ、主にそのルートのヒロインと状況解決を図る様、即ち絆が描かれます。

まず面白いのが演出、画面が物語に呼応して常々3D的に変化し続けると言うこと。カメラの拡縮、上下左右へのPan、一人称的視点移動などが平時から特段に演出され、それとスチル&立ち絵&画面効果各種&震動とが合わさって、ゲーム世界内での真実を描写した折の説得力がとても素敵に構築されています。

次にゲームとして。本作は一定のエンディングを見ることで追加選択肢が出現して読める物語が増えていきます。……なのですが、そういう仕組みなのにも関わらず、最初から解禁されている選択肢が隠しのそれより多い。ここが本作の実に素晴らしい所ではないかと感激したことを覚えています。
ノベルゲームの、特に初回プレイでの楽しみのひとつに自分の意志で選択肢を自由に選ぶことがあるように思います。その意味から、妙なロックをかけずに自由意志の結果である結末を最初に体感できる本作チャートの実装には、クラシックにして根源的なテキストアドベンチャーの楽しみがありました。それでいていよいよな致命的ネタバレな部分にはしっかり鍵がかけられている構造もこれまた素晴らしい!
更には各ルート毎明かされる物語の核心がそれぞれ異なる点も見逃せません。世界観を気に入る、真実を探求する、葛ちゃんの蘊蓄登場を待ちわびる、サクヤさんのカメラ人生から色々学んでみる、ユメイさんとのシンクロ率調整頑張りつつ彼女の背景に悩む…ひとつでも心に触れる所がありましたら、それが切っ掛けとなって本当に和む吸血ライフをお楽しみいただけることでしょう。

これら小さく大きな工夫の積み重ねが結実し、本作は遊んでいて興味をかき立てる事象に事欠かない内容になりました。シナリオチャートを目視確認できるオプションに用語辞典機能にエンディングリスト。それらを自然に物語をゲームとして楽しむ道具の形で活用するようなっていく程に作り込まれた舞台に登場人物にBGM。本当いいゲームにございましたです。

システム

本作システム部分を語る上で欠かせないのが、あまりにも完璧極まるシステムボイスの存在です。
システムボイスとは画面内メニューの内容を登場キャラが読んでくれるものなのですが、本作が提示したクオリティが、…凄いなどといった言葉にて表現することが心底憚られるほどに素晴らしいと申しますか、それほどに目を要さないプレイが無問題になっている状況となっているのです。
メニューを開けばセーブ・ロード・各種設定などフォーカスした内容を読み上げるのはまさに序の口で、オプション画面では選ばれた項目の9割その内容と動作を読み上げ、セーブロード画面ではファイル選択画面の表示通知、上書き確認、ロード確認のダイアログ全てフルボイス、更にはそれが本編登場主要キャラほぼ全ての音声にて収録されていて自由に選べる天井知らずのサービスの塊。

筆者には視覚障害があるのですがこれには全く驚きました。キャラゲとしてのエンタメ的側面が、結果視覚障害を有する、画面を用いずプレイする状況での直接的便利へとつながった物語。
ぜひ一人でも多くの方に、このユニバーサルデザインの塊、むしろ具現であるところの本システムを体験いただけましたらと思います。

少し補足として、本作の選択肢の並び順がユニークなのでご説明します。

このゲーム、「はじめから」を選ぶ毎に、選択肢の並び順が変化いたします。
すなわち、続きからのデータをロードすれば、そのとき表示される選択肢の順序は固定されているが、プロローグから遊ぶ(タイトル画面ではじめからを選ぶ)すると、選択肢がシャッフルされる仕組みです。

ここだけ踏まえれば、あとは快適と迫力を中庸極まらせた実にフラグの佐賀市甲斐がある良質ADVを隅々まで遊ぶことができます。

終わりに

男キャラがなんだか少ないような気がする本編ですがきっと気のせいです。「けいおん!」ほどには男キャラ出てきますので、そのバランスがあればこそ、本作では様々な形での女性同士の絆や友情が描かれた結果となっております。

私的には一見ゆるそうなのにその実筋がしっかりしていて台詞の端々に人情と優しさがあふれる本作の主人公が特に好きです。
上の公式サイトにもぜひお足をお運びいただき、声優さんのインタビューなども読んでいただいて、もし少しでも気に入られましたらぜひとも一度遊んでみてください。

こういう内容は秋の夜長にぴったりかもです。そんなわけで、システムボイス秀逸極まる良作ADVの紹介でした。

コラム:PS3でやってみた

めでたくPS2アーカイブスで配信開始されましたので早速プレイしました。
第一印象は、本作に施された画面&音作りに対する発見があまりに多いことです。
PS2のハードウェア的制限から解き放たれたフルスペックのアカイイト、HDリメイクもですがこうした純粋なアーカイブスでこそPS3内蔵のアップコンバート機能&元々の素材の魅力が生かされるよう調整が行われるのであらためて凄い機械だなと感じ入った次第です。
例えば冒頭シーンの潮騒の音など、この上なくステレオサウンドがイカされた大迫力のものであったのだと。そしてBGMはこんなに丸みを帯びた柔らかな音作りだったのだと。
一方でPS3のコントローラーはデフォルトでワイヤレスなので、場所を選ばず遊べるのも嬉しい点です。
元々あるソフトが環境の向上により新しい魅力とプレイスタイルを創出する。あらためて本作を好きであれてよかったと感じた出来事でした。
ゲームそのものはPS2版と同じなので、タイトル毎に作られる仮装メモリーカードを使ってあらためてフルコンプリート(全エンディング制覇)までやりこもうと思います。
長いことあそんでいないと色々忘れているもので、そこから来る新鮮さも楽しみながら。
既に遊んだ方もこれから遊ばれる方も、もしPS3をお持ちでしたらぜひに遊んでみてください。おすすめです。

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