十三機兵防衛圏
ジャンル | ドラマチックアドベンチャー |
開発 | ヴァニラウェア有限会社 |
販売 | 株式会社 アトラス |
対応機種 | PlayStation 4, PlayStation 5 |
公式サイト | 『十三機兵防衛圏』公式サイト |
人生初めてのゲームソフト
生まれて初めての経験が愉快であれば、一生の趣味となるのかもわからない。
とりわけ趣味ならなおのこと、どうやら楽しそうだと触れてみて、もし「楽しい経験」でなかったら、我と己は別世界の無関係の楽しさとの認識が生じるのは自然です。概して視覚を用いると引証されているTVゲーム界隈、例えば視覚障害の方にとっては愈々とそうでしょう。ゲームをやり、結果楽しめなかったら無縁の確認をしただけの時間となります。失望感だけが残るのです。
故にこそ、視覚障害をお持ちの方を含めて本作を「生まれて初めてのゲームソフト」としてお薦め申し上げるものです。
物語
1985年 5月27日 月曜 午後4時30分、日本のとある地方都市へ怪獣が襲来。その被害は全世界規模との報道が避難誘導と共にアナウンスをとどろかせる中、それぞれの理由、過去、事情から「機兵」と呼ばれる兵器へ搭乗することとなった少年少女が集い、怪獣が接触すれば世界が終わるとされる「ターミナル」の防衛へ挑む。
ゲーム概要
上記の物語を軸に、
1. 13人の主人公がそれぞれ「機兵」へ乗るに至るまでの経緯を体験する『追想編』
2. 実際に防衛戦を行いつつ物語の結末へ向けて主人公らの一丸となり突き進む『崩壊編』
の2つのモードを交互にプレイします。
アドベンチャーパート 追想編の詳細
各主人公のストーリーを物語として楽しむ追想編には、次の2要素があります。
1. 会話
2. 探索
1の会話は日本語、音声あり、いつでもセーブ(プレイ経過の保存)が可能と、安心して接して頂けます。
2の探索は画面内を徒歩で歩いてその中にある「調べられるものや人物」と接したときに丸ボタンを押すことで物語が先へ進みます。
画面を目視せずプレイを行われる場合、次の情報が役立ちます。
A.主人公の画面内移動に応じて足音の強弱、左右、字面や洋服の材質での足音の変化が表現されることでの状況把握が可能です。
B.調べられる場所(丸ボタンが押せる場所)へ来ると効果音で通知されます。
C.カメラが回転しないため、同じ操作をすれば同じ場所に主人公がいることとなるのはトライアンドエラー、試行錯誤の助けになります。
場面毎の詳しい情報を下記いたしました。クリアを目視せずに可能となる可能性を高めていただけます。
バトルパート 崩壊編の戦略
実際に機兵へ乗り込み戦うパート。ジャンルはタワーディフェンス、リアルタイムストラテジーに分類されます。ここも視力を必要としません。その要素は次の通りです。
A.武器選択時などのメニュー捜査中は時間が止まるため長考が可能
B.選んだ武器の攻撃圏内に敵がいる場合、その範囲へ自動でカーソルが動き、そのことが効果音で通知される
C.主人公らの出撃地点=敵の目標地点の近くであるため、敵のいる方角へ「移動」せずとも敵自らこちらへ来る関係から自然な接敵が可能。
これは本作の設定と物語とゲームシステムが偶然に(必然に)組み合い結実した奇跡のバランスです。奇跡的に視力の依存度が少ないゲーム部分として結実されており、ぜひに体験頂けましたらと思います。
13人の主人公
無事クリアをいたしまして感慨も一入。作品と作品の登場人物への思い入れが醸成されたことこそは、恙なく視力を必要とせず本作がプレイ可能なことの証明であります。各主人公への雑感など、ここで筆いたしたく思います。
冬坂五百里
=シミュレーションRPGパートで最初にプレイする女子高生。ゲームを始め立てで(プレイ方法の)わけがわかっていないプレイヤーを実に代弁くださる搭乗シーンが素晴らしいのです。追想編では「無敵の女子高生はロボットにだって乗っちゃう」など申してから直後のこれと知られる崩壊編の最初も又素晴らしい。即ち彼女の物語の素晴らしさは、知らないことが必ずしも呵責にならない世界の暖かさであります。
本作には様々な奥深い裏設定、SF考証、人間関係がございます。そんなこと関係なく一目惚れした男子へモーレツアタック、友人との時間を素朴に楽しむ生き様の大切さを語る物語。そんな彼女を最初に戦闘パートでプレイする意味の大きさは計り知れません。ぜひ彼女と共に当惑しつつ混乱しつつ、防衛戦へ身を投じてみてください。
鞍部十郎
追想編、アドベンチャーパートで最初に操作する内向型の少年。怪獣映画をこよなく愛する。
最初にプレイ可能な主人公ではありますが結構難しい、特定のタイミングで廊下に出て特定の人物と会話する必要があるなど、結構にテクニカルな攻略要素がある彼です。その時にプリントをもっているかいないか、同行者の有無でも変化するフラグ。結構複雑。行き詰まったら他の人物のプレイに切り替えてあとからやるので全然問題ないかと思います。そんな彼も物語を経て徐々に明らかとなる性質、本気モードの彼は実にオトコマエ。
しかしです。85年朴念仁モードでの彼には看過できない悪業がありますので個々で披瀝です。自宅へ増える居候に辟易するのはわかります。敬語を使うのが苦手、これも自然のことと思います。理由もわからず女子にアタックされる辛さも理解します。ただ、夕食のハンバーグに罪はありませんでしょうよと。出された夕食です、一切手を付けずに部屋へ戻るとはどういう了見でしょう。そのために死んだ牛と野菜と流通の方々と恵ちゃん(調理者)へと一生をとして償って欲しいと思います。
薬師寺恵
2025年の乙女。そしてプラトニックラブと焼きそばパンの女神。前者は三浦君との夕食、後者は隆俊さんへのお裾分けに寄ります。
自身の問題に呻吟懊悩する時でなく、ふとした日常の幸せな描写が素敵な彼女。男女の友情とはこれだけ自然にあり得るのだと教えられる好人物なのであります。直面する問題が減れば減るだけ幸せになるだろう彼女の未来に幸い多くありますように。ですから難題珍題の頻出する本作での具合の辛さ。ピストルは似合わんです。ケーキ食べていてほしい。
関ヶ原瑛
お風呂、どうしていたんでしょう。こればかり気になっていました。五百里ちゃん、バイク二人乗りしてて匂い、大丈夫だったのかななどと。ああ申し訳ない、こんな夢のないことを書いて。記憶を失った少年の逃亡劇から始まるこの物語は、記憶より根本にある人間の生来の特質にある価値へとそのフォーカスが当たって行きます。お楽しみください。あと、そう。彼のシナリオで欠かせないのがスマートスピーカーならぬスマートバイク。あのバイク、きっと皆さん欲しくなる。ぜひ彼女に会いに行ってみてください。惚れます。私は惚れました。
郷登蓮也
残念なルルーシュ。「貴方は誰です」こちらのセリフです。2065年の直接描写が薄いものだから彼の事情が実に不明瞭で。物語の殆どが物語でなく会話で進行するのが特徴です。最後の方で、彼のシナリオなのに開幕から2分くらい彼が全く出てこないパートがありまして。あそこ結構おもしろかったと。
南奈津乃
もう、可愛い。何故かといってリアルなのですもの。好きなものある人間の自若が表されております。そして人間そう簡単にパニックに陥らないし絶望もしない描写が頼もしい彼女の物語でした。そんな彼女が何に、誰のことでどう当惑するのか。悲しむのか、そここそが物語のコアと味わえるのは甘露でした。旦那様と死ぬまで初々しく幸せであってほしいと願います。それが容易に思い描ける素晴らしい人物です。
三浦慶太郎
大日本帝國の中道青年。責任感と実直と丁寧のお人。
男子が一人称を「私」と語る美しさ、ら抜き言葉の対極にある丁寧実直な日本語使いに当時の教育が、道徳でない修身が臣民の徳をどれだけ重んじたかがわかります。確かに、佐久間艇長の挺身を知れば私も斯くあろうと思い至るのは実に自然のこと。令和の今からでも学べる題材に満ちあふれた学問です。失礼、話がそれました。
そんな彼が85年の日本で過ごす上での自然な順応が叶ったのはその実直の故と描かれた素敵さ。あの温かな夕食の場面はぜひ多くの皆様に体験頂きたいところです。
比治山隆俊
大日本帝國の護国青年。彼が生み出す笑いの要素に、彼を嘲笑する類が全く包含されていないと気付くのであります。彼の実直と大真面目の真正面と、それが結果として生み出すあれこれトータルでの面白さ。焼きそばパンを片手に御覧ください。
緒方稔二
電車でGO。試行錯誤の連続、折れない心が試されます。
それはさて、幼少時代に看過できない場面があり。共同体として社会的に子供を守る立場にある大人が子供を攻撃するとはこれほどに胸を痛めると知られる。彼に腹の据わった子供時代でさえ旨の抉られるような場面。大人がこどもにいかんことをするのは本当にいかんと教えられます。
如月兎美
ハイパーコンデンサーでヘビーレールガン2発が気持ちよい、気持ちよい。
あとマンション1Fにあるようなケーキ屋さんは、行けるときに行っておきましょうと言う教訓。いつ、なくなるかわからないのですから。震災、洪水、コロナ。
明るくも理知的な彼女も現実を変える力は有しない。誰にも等しく訪れる絶望を乗り越える技を、その背中に学びました。川口浩探検隊シリーズのリメイクを希望します。
網口愁
イケメン。そしてイケメンも人の子。真実へと近づく知性の理由はただの理由で、どう動くかの魂の部分こそは大切と描く物語。同じDNAでも別の女性に惚れるとは蓋しその象徴の要素です。行動で真実へ肉薄する様子が楽しい物語でした。
鷹宮由貴
超可愛いのです由貴ちゃん。心に壁作ることと分け隔て無く誰とでも同じように接することは両立できる。そうして相葉エリカ様と接した結果、すごい勢いで未来が開かれて行く中盤は必見。
東雲諒子
教室の右から出るか、左から出るか、単独行動をどうして成立させるか、頭痛。アドベンチャーゲームとしての試行錯誤が楽しい、要素として充実ある物語でした。落ちてから浮かび上がる人生の美しさ。彼女も又、本編終了後に愈々幸福となる人物の一人と考えます。故に後日談であるアンソロコミックスでその幸せな様子が一部描かれていたことに感謝いたします。
終わりに
いざ何か感想を書こうとしたら次から次へと出てくる。これが本作のエネルギーとあらためて理解いたしました。いかがでしょう、この楽しさ。
本ページ下部に、視力を用いず本作をプレイ頂くに際して役立つ情報を、実際に視力を用いずまとめたものを設置しました。基本は上記の通り殆どを視力を必要とせずにプレイ可能な要素でできている本作、しかし崩壊編のチュートリアル2つ目で「移動」が必要となる場面など、残念ながら何もかもが全くの追加情報無しでプレイできるわけではありません。そこを、その突破を助ける情報があれば視力を用いず自力で解決可能となる可能性があるのがまた本作の素晴らしいところ。
ご興味ご関心からPS4、ないしはPS5と本ソフトを購入されコントローラーを手に取られたならきっとそのモチベーション、期待こそが壁を突破する推進力となることでしょう。以下の情報を含め、広く共有されることを願います。
それでは今日はこれにて。
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