越えざるは紅い花 ~恋は月に導かれる~

公式サイトhttp://dramaticcreate.com/benibana/
ブランドOperetta Due
対応機種PS Vita(VitaTV含む)/PSP
ダウンロード版入手先PSストア

私の導かれるまで

さて、ノベルタイプのアドベンチャーゲームを購入する時、とりわけ重視していることがあります。
主人公のCV(ボイスキャスト)の有無です。
私的に視覚障害を有している関係からこの情報を重視しているところはあるのですが、しかしそれも前提要素とはなりません。
主人公にボイスのない作品で面白かったもの、マブラヴシリーズにエリュシオン、インタールードにつよきす、最近ではノラと皇女と野良猫ハート。いくつも思い当たりますしこれからも増えるは必定と考えております。
ただしかし、フルボイスは作品へと出会う切っ掛けには、確実になっているだろう実感も同時に思われるのです。
例えばDies irae。あちら公式ソフトウェアカタログに『ドラマCDの内容を収録』などの分限、そしてPC版の頃から主人公ボイスのあったことと組み合わせてまいりますと、それを切っ掛けに購入したことはやはり思い至り、結果心の深奥へとぐさり突き刺さる、一生物のタイトルとの出会いとなりました。
生まれてはじめてプレイした本ジャンルのタイトルである『機神咆吼デモンベイン』、こちらが主人公込みフルボイスであったのも完全なビギナーズラックながら、ともするとそこで主人公ボイスも含めた「演出」として物語を楽しむ魅力が体へと染み渡った、そうした流れだったようにも思い出されます。
そして本作『越えざるは紅い花 ~恋は月に導かれる~』も、そうした感慨の延長にプレイすることの叶った作品の一つです。
その出会いの切っ掛けへこそ感謝される、そんなプレイ体験となりました。

いざ手に取り、徐々にのめり込みます

主人公ボイスありと知った本作、せっかくだからとVita版を購入いたしました。
さて第一印象、プロローグで母親がしゃべらない、正確には台詞は画面上に表示されているのですがボイスがキャスティングされていない状況を体験します。
当初、この事実に不安を覚えておりました。
今考えれば全くの希有だったのだからなんのことかと思うのですが、これにて物語の理解が不便となることのあったらばどうしよう。そうした心持ちが心中に去来したことは当時のこととして思い出されるのであります。
そうしてその不安は、プレイすればするほど全く考える必要のないことだったと知られてくるのであります。(故は後述)

知的イケメンへ導かれる

とある原因不明の疾患から女性の数のみが著しく減った中世ファンタジーを彷彿とする世界。
ルス国に暮らす主人公のナァラは幼少期での両親との離別を体験しつつも王家の有力者に見初められ、そろそろ結婚といった状態から物語が始まります。
しかしそんな折、これもその不治の病で女性の数を著しく減らしていた隣国ナスラがルスへ進行、そこに暮らす多くの女性を攫う蛮行に及びます。
そんな中、巻き込まれ攫われたナァラでしたが、さてその先での生活と出会う人々との交流との中で、自身の運命と未来を切り開き、時に伴侶と添い遂げる様子を丁寧に丁寧に描いた、そうした物語であります。
まず攻略は後のこととして、思ったままに選択肢を選びながら物語を薦めていこう。こう思いながら好きなようにやっていたらばナスラ国王の政務補佐のノールという男、彼が粛々と、ただ懊悩するのでなく淡々と状況の改善へと冷静に手を尽くす様子に魅力を覚えて参りました。
トーヤ王と思想面で共鳴し、攫われてきた女性の卑語に徹するよう制度面からの改革へ苦心するその実直な姿へ惹かれていくのは、国の中へ入り、そこが一枚岩ではないと知られればこそ。
そうして異文化と接し人間と接し、さてその物語は国状に影響少なくない大臣への説得、その成果を筆頭に急激に主人公と距離を縮め、信頼を醸成していく方角へと流れていきます。
ここから急激に物語が流転していきます。
もはやこの段になると、ノールに元々備わっていたナァラへの恋心は共に過ごした時間から、本人も制馭に難儀するほどのこととなっています。
そこへきて、共に改革へ邁進していたトーヤ王と主人公との接し方がさりげなく、分岐としてプレイヤーにまるでなんでもないようなことのように差し出されます。
そこでそれこそなんでもないようなことのように八方美人を選んだら、果たしてさてさてどうなったか。
これはここではネタバレからぜひとも記せないインパクトある凄いバッドエンドでして、このなんでもなさそうな演出からこそ良かった。何でも無いようなことから人間関係は容易く滅ぶ場合あること示された本作はあらためて凄かったと回顧されます。
この辺りまでプレイしていきますと、そういえばサブキャラや端役の登場人物にボイスがないという事実など、認識の彼方へ消えていることに気づかされるのであります。
理由はシンプルで、主要キャラクターとの会話、対話こそで物語が描かれているがためにこそ。
物語としての構造を味わうというよりか己がナァラとなり、その魂毎シンクロナイズしまして一喜一憂する。そういう楽しさが素晴らしい作品だと気づいたのはちょうどこの頃でした。
故にこそ願う、事態の解決。
トーヤ王へはあくまで職務として接することを貫徹することで、美しく開ける未来の登場であります。
ノールとのハッピーエンドは到達した充実のあるものでしたが、それもあのバッドを経由したからこその達成感と、どうも思えてならないのです。
ですから本作は「ゲームソフト」だったと思い出される具合、。
本作の選択分岐には、相手からの好感度が上がると鈴音で通知してくれるユーザーインターフェイスのあるのですが、ならそれを使っておれば楽々クリアできる、そんな甘さと無縁な構造だったのが、やはり素敵でありました。

エンディングを超え、輪廻は流転され

もしもあそこであれをしていたら、あのときあそこにいたら。
アドベンチャーゲームの醍醐味は、プロローグから再プレイしたりセーブデータから物語を再開することで、こうした「もし」を実現可能であるところであります。
そうしたら物語は変化するし、結末も変化する。
堪能する結末は、その後も実に面白いものでした。
結末が面白いばかりでない、道中の面白い場合も多々で。
トーヤ√の「彼の真実」に原因するバッドエンド、ノールの部下であるエスタとでは「他人」「知人」「友人」「親友」「恋人」「伴侶」となっていく流れの素晴らしさ、政務でなく軍務を司るスレンとその弟子ナランとナァラが深くからむ√での、トライアングルスターの輝いたり黒ずんだりする具合。
全てが全て、ナァラの目線、ナァラの選択として描かれるものだから、そしてその分岐が結構な数になるからこそ愈々と、そのプレイした時間が体験のようになってくる。この具合は実に充実のされたものでありました。

おわりに

まずは無料で手に入る、Vitaのテーマなどいかがでしょう。
このテーマを利用すると再生されるピアノ音楽はタイトル画面のそれなのでありますが、悲壮でもなく激しくもなく、なにもないのでもない、敢えて言うならば人肌の温度。それが一部、体験されることと思います。
叙情と人情を入浴かのようにじっくりと体と脳を浸して味わう具合、ぜひ一度体験などされてみるのはいかがでしょう。
主人公ナァラの人物は、さて元々に個性があるため彼女の「惚れた」事実から物語が動いてまいるようできているのが楽しくあります。
感情移入もあり、物語として楽しむもあり、両方も叶う。まさにプレイヤーは自由自在。
この自由、是非一度お試しください。
選択分岐の移動含め行われる、充実のシステムサウンドの実装。
そうした快適な環境あればこそ、本作が広く多く楽しまれることを願います。
  それでは、今晩はこのあたりにて。

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